「……。…んー……。」 歩き続けて日が落ち、夜10時頃、イハルが立ち止まり、眠たそうな声をあげる。 「…。……イハル、さん?」 アズベールは歩みを止め、イハルの方に視線をやる。 イハルはとても眠そうで、つり上がっている目もとろんと虚ろになっていて、如何にも… と、言う感じに眠たそうだ。 「…ちょっと貴女、もしかしなくても眠いんですか?」 「………ん……。」 イハルは生返事をして、ぎこちない手つきで目を擦る。 (…。…まだ、10時なのですが…。) アズベールはそう思い、どうしようかと立ち止まった…。 |
「…。…ねむい…。」 どうしようかと考えている間に、イハルがぽそりと呟く。 「あー……。…眠りたいですか?」 「……。…………。」 イハルは無言で頷く。しかし、近くに眠れるような場所(家等)は全くなく、ただ無駄に 広い草原が見えるだけだった。 ……否、「草原しか見えない」……。 「…ねぇ、貴女。どうする気ですか?」 「……。……ねる…。」 「いや、そうではなくて……。」 アズベールは、はぁ…と、溜め息をついてイハルの頭に手を置く。 イハルは特に目立った反応はせず、気持ちよさそうに目を細めたと思ったら… ぽふっ…。 軽く引っ付くように、アズベールの懐に倒れ込む。……最早半分意識が寝ているようだ。 「…って、イハルさんっ。貴女何人に凭れて寝てますかっ。」 その声に反応して、軽く薄目を開けて、アズベールを見上げるが、また視線を前に戻し、 もたれ掛かって寝始める。 アズベールは再び溜め息をついて、軽々とイハルを抱き上げ、木のところまで連れて行き 降ろそうとした…が。 ぐい…。 イハルがアズベールの服を掴んでいて、離そうとしない。 (……ちょっと、待って下さいよ…。) 私にこのまま寝ろと?と、アズベールは思考を巡らせるが、どうやっても、この状況は変 わりそうにない。 仕方がない…。 そう小声で呟き、イハルを抱き上げたまま木陰に座り込み、イハルを膝 におくような感じに寝かせる。 イハルの寝顔はあどけなく、年からは考えられないほど幼く見えた。 アズベールが軽くイハルの頬に触れる。 (…。…冷たいですねぇ…。…人の体温じゃないですよ、これは……) イハルの体温は信じられないほど冷たく、死人の様に思えた。 その体温に、病的…と、言う感じがしない、雪のような白い肌にはよく似合う気がした。 「……。…おやすみなさい。イハルさん…。」 アズベールは寝ているイハルにそう言い、自分も眠りに入った……。 |
朝、目覚めると其処は草原ではなく、白で統一された部屋だった。 「…。……?」 イハルは薄目を開けて、上半身を起こすと、見知った顔が…アズベールが目の前にいた。 「あぁ、ようやく目が覚めましたか。お早う御座います。イハルさん。」 アズベールはこの状況に動じず、淡々とした口調でイハルに話しかける。 「…っ……何ッ……!?」 イハルは顔を赤くし、とりあえず離れようと動くと、後ろに足場がなく、バランスを崩し 落ちそうになったところを抱き留められる。 「ひゃっ……!」 抱き留められた瞬間また顔を赤くして、自分の両手で顔を覆い隠す。 「…。……こういうの、苦手なんですか?」 アズベールはその反応に意外だ、と言わんばかりの声を上げる。イハルは顔を覆い隠した まま、首を縦に振り、頷いた。 「…。……人の家で、何してるんですの? 貴方達は……。」 後ろから声がして、イハルは顔を覆うのをやめ、振り向いた。 其処には、女が1人立っていた。 エメラルド色の髪を後頭部で束ね、腰までの長さで、そのエメラルド色の髪の中に青い髪 が幾らか混じっている。碧眼はぱっちりとしていて、髪と不釣り合いな感じがした。服装 は至って簡単で、白い長袖のYシャツに、黒くて膝上までのタイトスカート。そして黒い ブーツ……と、動きやすそうだった。年は18程…と、言ったところだった。 「何といわれましても、私はただ落ちそうになったところを助けようとしただけでして。」 「私(わたくし)から見れば、その女の子を襲っているように見えましたけど?」 「失礼ですねぇ、貴女。」 その女とアズベールは、毒舌…と、言うレベルまではいかないが、言葉に刺のあるような 会話をしていた。 イハルはその状況についていけず、1人少し慌てていた。 「あぁ、イハルさん。この方はですね、夜の散歩中に私たちを見つけたらしく、此処まで 転移で運んでくださったんですよ。」 「朝死体になっていても、夢見が悪いだけですから。」 アズベールがイハルに説明し、女は軽く付け足すように言った。 「あ…。…ありがとう。」 イハルは女に向かってそういった。すると女は微笑み 「私はサラ、と申しますわ。サラ=アスカリク=リスティン。これでも医者をしてますの よ。」 女はサラと名乗り、にこやかな笑顔でイハルを見た。そのまま十数秒、沈黙が流れた。 十数秒後、サラが溜息をついて、沈黙を破った。 「…ほら、何してるんですの。今度はお嬢さんの番ですわよ。」 「…。……っ…」 イハルは名乗るのを戸惑った。それはそうだ、自分は殺人狂一味…ストレインの1人なの だから。幾ら反逆してるとは言え、誰もが憎んでる一族の1人を許すわけがないのだ。 「…。…イハル……。…イハル=ストレイン…。…」 それでも命の恩人になってたかもしれない人に嘘をつけるはずもなく、イハルは気弱に、 そう言葉を発した。 「イハルさんですわね。事情は其処の黒ローブ野郎に聞いていますので安心なさいな♪」 サラは、ぱふっとイハルの頭に手を置いて、にこやかに笑う。 「…。…って言うか、アズベールさん。貴方は何時までイハルさんを抱き留めてるつもり ですの?」 「…っ……ぅわっ…!」 イハルは正面を向いて、再び真っ赤になり、わたわたと手を動かして焦る。 「…くく…。…純情なんですねぇ、貴方は。」 楽しそうに笑いながら、アズベールはイハルを立たせて、自分も立つ。 アズベールはゆうに190Cm程の身長がある。サラも160Cm後半といったところだ ろう。その中で、ただ1人イハルが160Cmの背で、一瞬敗北感を感じたが、顔には出 さないようにする。 「…あぁ、そうですわ。イハルさん。ツッこませて頂きますと、旅に下駄は不向きですわ よ?戦闘があるなら尚更ですわ。それと、痩せ気味傾向にあるからちゃんと食事なさい。 体力持ちませんわよ。」 サラは中に真面目な表情になり、ずばずばとイハルに面向かって言い出す。 「ぁ…は、はい……。」 イハルは予想外のサラの行動に、何を言えるわけもなく、思わず勢いで返事をしてしまう。 そのイハルの様子に、アズベールは楽しそうに笑っている。 「…何だか心配ですわねぇ…。…あ、あと1つ、良いかしら?」 サラは溜息をついて、アズベールとイハルの2人が視界にはいるように、数歩下がる。 「…。…少し暇ですの、この仕事。…その反逆の旅にお供させて頂くって言うのは駄目で しょうか?」 「「ありです。」」 下がった後、くすくすと苦笑しながら言ったサラに、アズベールとイハルは、同じ台詞を 同時に発した。 「…では、これから宜敷お願いしますわ。イハルさん。黒ローブさん。」 即答されて、可笑しそうに、楽しそうに笑うサラ。 「…私の名前は、黒ローブではないのですがねぇ」 黒ローブと呼ばれ、アズベールはサラにそう言った。すると、サラは 「良いじゃないですの。お似合いだと思いますわ。見た目まんまですもの。」 そう、冷笑を浮かべながら言い放つ。 「見た目云々以前に、名乗ったでしょうに、私。」 アズベールはあくまでにこやかに、それに対応する。 「あら、お似合いだと思いましたのに。」 何処か棘のある言い合いに、2人の間で1人、表情には出さないものの、イハルは困って いた。 (…。…何だか、不安だ…不安……。) この3人で行動すると、かえって旅が長くなるかもしれない…と、心の中で思うイハルだ った。 .......to be continued |
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