来なら、アタシは手ェ下すコトないんやけどね。」

              「今回は例外。そうじゃないと気の毒になるから。」






「だって、結果の見えない未来だよ。恐いと思わない?」






天使ハレルヤ
             
No.5.......『告げ人』


       
旅支度をするのに、イハルだけが必要だと言い、サラはアズベールを追い出した。ア
ズベールは大して気にせず、外に出て、草原を見回す。風がその草を撫でては駆け抜
けていく。その音がたまに聞こえる。しかし、それも大して気にならなかった。アズ
ベールが今この状況で気になったのは、ただ1つ。

その音と一緒に、走ってくる音が聞こえた。


「…。………………?」

軽く、その音の方に顔をやると、傘を持った少女が走ってきた。
黒としか形容の出来ない髪は肩まであり、前髪が長い。白で半袖ポロシャツに、紺色
のプリーツスカート。黒のハイソックスに、茶色の革靴。手には傘を持っていた。そ
の目は赤味がかかった焦げ茶色で赤渕の眼鏡を掛けていた。14歳くらいの少女であ
る。

「…。…お客様、ですかねぇ。」
アズベールが呟く。少女はどんどん近づいてきて、そして、近くで足を止めた。

「けはっ…。…ぅー。走んの怠ぃー…。………。…ぁ、発見発見ッ!」
少女は息を整えた後、体勢を直し、アズベールを見て笑顔になる。 そして、肩を鳴
らして、アズベールを直視する。


「始めまして。魔術師さん。…。…始まりを告げに来ました♪」

少女は、また、笑った。

 



 「……告げに来た? 始まりを?」
訳の分からない、と云う声で少女に返す。それもそうだ。少女の台詞は、納得するに
はあまりにも唐突で、意味が不明過ぎる。 しかし、少女は笑顔を崩さない。それど
ころか、何処か楽しそうに笑う。
「…そう、始まりを。…遅くなったけど、1つの大きな物語が始まるんだよ。」
「…。…物語、ねぇ。」
少女は笑みを崩し、どことなく楽しそうな声で言い放つ。それに対し、アズベールは
何とも言えない感覚を覚える。
目の前の少女は人間だ。これは間違いないだろう。しかし、その…“人間”と云うだ
けでは説明のつかない…威圧感。いや、存在感が少女にはあった。人間でありなが
ら、自分と同等。若しくはそれ以上の何かがありそうだ。…と、直感的に悟る。
敵に回すべきではない。そう思った。
「そう。物語。本来なら、アタシは手ェ下すコトないんやけどね。」
意地悪い笑みを口元に浮かべて、少女は空を見る。
「わ、雲の動き早いねェ……」
そして、小声で言い放った。
「…。…貴方は一体何者で、何方なのです?」
アズベールは、その小声を無視して、聞きたいことを聞いた。
少女は視線をアズベールに戻し、ぐい…と、身体を伸ばす。

「アタシ?…アタシかな。 名乗りたいんだけど、名乗れないんだよー。…強いて云
うなら“告げ人”とでも呼んで。それ以外なら考えて。…何者。…それも告げ人とし
か言えないなァ。」
軽く苦笑する。
それは最早、本当に言えないと云うことをしめしてるようにしか思えなかった。

「では、もう1つ「黒ローブッ!何やってますのっ! もう30分経ちましたわよー
!!」


…何でこうもタイミングが悪いのか。アズベールはそう思った。
後ろを振り返ると、窓から身を乗り出し、叫んでるサラの姿が見える。サラの後ろに
は、おどおどとしてるイハルの姿が見えた。

「ほら。行きなよ。 また、告げに来るときに、会えるから。」
告げ人は薄ら笑いを浮かべて云う。その言葉には何処か真実味があったので、取り敢
えず従い。告げ人に軽く御辞儀をし、サラ達の方へ戻る。

 


それを見送った後、告げ人は溜息をついた。
告げ人しか居ない草原の筈なのに、もう1つ気配が増える。

 …。……ずッ…。…

気配の発生と共に、周囲に黒い霧が現れ、一ヶ所に集まり、固体化していく。 どん
どん、人の形を成していく。

その気配は物凄く読みとりにくいモノだった。“この世に有って在らざる者”とでも
云おうか。 人形みたいに、ただ其処にあるんじゃない存在感。人間みたいに、はっ
きりと存在するコトを示すわけでもない存在感。其処に“何か”が有ると云うのに、
本当に存在するモノか…? と聞かれると、答えを濁すしかない。 否、答えられな
い…。 その上、種族間がハッキリとしない。人間であり人間ではない、天使であり
天使ではない。悪魔であり悪魔ではない。…種族がない、と云うのが近い答えであろ
う妙な“人型”…。

霧が完全な人型を成す。

其処に有る人型。真っ黒な髪は、肩まであるサラサラストレートで、前髪が若干長
い。眠たそうで虚ろな半開きの、灰色の目。黒い長袖のブラウスに、同色のブーツ。
そして目と同色のロングスカートをはいている。 …年は13歳程であろう少女だっ
た。

「…。…やぁ。“告げ人”…。…君が動くとは、思わなかったよ…。…私はね。」
人型はにこやかに笑う。
人が良さそうな笑みは、無邪気で、無邪気過ぎて…。…何処か恐怖感を感じさせた。
「今回は例外。そうじゃないと気の毒になるから。」
告げ人は人型に振り向かず、軽く足先で地面を叩き、云った。
「君が気の毒と云うのかい?」
「まぁ、ね。」
淡々とした会話。
告げ人が振り向き、人型を見据える。
「…君が愉快犯なのは知ってるけど、正直、わざわざ此処まで出向くとは思わなかっ
たよ。…ね、キギリ=エルハイド=ニュクス…」
人型の名はキギリと云うらしい。
…キギリ=エルハイド=ニュクス。 

12神を結成した張本人、無神の名だった。

「愉快犯、か。 君ほどではないと思うよ。告げ人。」
キギリは無邪気に笑う。
「だって、告げた方が面白くなる、って思ったんじゃないの?」

「違うよ。」

告げ人は否定する。

空から水滴が振ってくる。


雨だ。



告げ人は傘をさし、キギリを直視し、真顔で云った。










「だって、結果の見えない未来だよ。恐いと思わない?」












「…。…ちっ。 こんな時に雨が降ってきましたわね…。」
「やむまで、外に出られそうにもないな……」
窓の外を見ながら、サラとイハルが云う。
アズベールは、雨より、告げ人が何故始まりを告げに来たのか。そして、何をもう1
度告げに来るのか考えていた。
「…何時、この雨終わるんだろうな…。…」
イハルがふと、呟いた。

……終わり………?

アズベールは顎に手を当て、考えた。

「始まり」があるのだから、「終わり」もある。…そう考えるのは普通じゃないか。
告げ人が告げるのは「始まり」だけじゃない。「終わり」も告げるのだろう。

その「終わり」が一体何を指すのか、それが判らないが。

それを考えようと、俯くと。


「ふにゃああぁああぁああっっ!?!!!?」

 どがあッ!

…明らかに少女の叫び声と、衝突音が聞こえた。
「何事だっ!?」
「何事ですの!?」
イハルとサラが同時に声をあげつつ、立ち上がり、玄関の方に駆けていく。

その間に、アズベールはふと、窓の外に目をやった。



…もう、其処には告げ人の姿はなかった。




                    ...........to be continued

                     




贈者のお言葉。良く読むように(笑)

非常に遅くなって御免なさい(平伏
何かスランプしてましたとも! えぇ!(消えて下さい
て云うか短いですネ!(爽。
…もう気にしないで下さい。どうせ駄文ですから。判ってますから(弱
                           宮 


天使のハレルヤ 資料

キギリ=エルハイド=ニュクス
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2神
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http://w1.oe-guri.com/bbs/nanakusa/data/IMG_000100.jpg (↑の拡大版(名前無し

げ人
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制作・著作 夕華君  編集(多分)ハム

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