「白にも黒にも成りきれない、聖にも魔にもなりきれない。 悪と善にどれほどの違いがあるのだろう? そもそも、悪と善の定義とは何だろう? 敵か味方かそうでないか、じゃないか。 …少なくとも、私にはね。」 笑い声は風にちぎれて、消えた。 |
かつん、と足音がした。 その音は、その神殿の中では微かに響く程度、僅かな音をさせて消える。 しかし、不思議にも儚げな感じはしない。感じ取れるのは焦りであった。 女は天井を見上げた。 ステンドグラスには十字架と鳥が有って、その焦った気持ちを少し落ち着けた。 溜息とも安堵の息ともとれる息をはき、きっ、と、真顔に戻る。 その髪はすみれ色のような紫、後頭部より、もう少し下の位置で束ねている。 真面目さが伝わってくるような、つり上がった目、色は髪と同じく、紫である。 青い、ノースリーブでロングスカートのワンピースの上に、クリーム色で、肩だし、裾の短く長袖の服。 そして灰色のブーツ。 20際程の、女。 名をロフォルカル=ダークフェイス。 罪神の位に就く、12神の1人。 種族は人間。 それで有りながら不老不死。…‘エセントラ’と呼ばれる種だ。 ロフォルカルが、眉間に人差し指をあて、残りの指で顔を覆うようにして、溜息をつく。 「どうしたものか…。…神殺しの波動、エリュディングスの気配が弱まった…。…これは、一体何を指すと言うんだ…?」 ブーツの先で床を叩く。小さく、こつ、と音がした。 紫色の髪が、軽く揺れる。 「…ロフォねーさん。」 ロフォルカルの背後から声がした。 男の声…なのだが、それにしては やや高め。 女にしては低い声。 振り向き、背後にいた…男を見据える。 「…フィスティニィか。」 ロフォルカルは小さく呟いた。 フィスティニィと呼ばれた男は頷き、軽く首を回し、ロフォルカルを見据えた。 茶色の長さがバラバラな髪、長いところは首筋にまとわりつくように、肩まである。 赤い双眼。どことなく虚ろで、少し大きめ。 中性的な顔立ちで、女の子にしては凛々しく、男の子にしては可愛らしい感じ。 白くて、胸の辺りから灰色になる長袖の服に、白いズボン。濃い灰色のベストを着ている。 黒い靴を履いている。 …18歳程の男。 名をフィスティニィ=アムルタート。 炎神の位に就く12神の1人。 種族は九尾の狐。 名付き(原型が獣で、人型に成れるもので上級の妖魔)である。 フィスティニィが、一歩ロフォルカルに近づく。 「久しぶりだねロフォねーさん…。…元気だったかい…?」 気怠そうな声で、話しかける。 「…元気でもないさ、その逆でもないが。 …お前は相変わらずの様だな、フィスティニィ。 やる気のなさが滲み出てる。」 前髪を掻き上げて返事をする。 その言葉はキツく感じるかもしれないが…フィスティニィとロフォルカルは幼なじみにあたり、その程度では動じないし、この言葉に嫌味が含まれていないこともフィスティニィには判った。 慣れ、とでも言うのだろうか。 「…で、今日は何か用でもあるのか…?」 「…。…気付いてない、訳はないと思ってるんだけどねー……。」 その言葉で、ロフォルカルは大体の用件を感じ取った。 面倒くさがりなフィスティニィが、わざわざ此処まで出向く理由。 朝から感じ取っていた、神殺しの鎖の波動、エリュディングスの気配の弱体化。 前々から不審なレァツライの行動。 「……12神会議か。」 「…ご名答ー…。」 数分進んだかのように思える、この神殿の空気。 実際はまだ数秒しか経っていない。 「…他の12神は…集まっているのか…?」 「キギリは既にリィセヴァイル神殿の方に。…他は、こうやって皆を呼びに行ってるのさ。」 そうか、と肯定の声をあげながら、ロフォルカルは伸びをする。 さらりと、紫の髪が揺れる。 その風が、少し強めに吹いた。 …まるで、早く動けと言うかのように。 |
「僕が出会った数々の者の中で、一番、面白い。」 ..........to be
continued |
寄贈者のお言葉。良く読むように(笑) |
参考資料ー。 No.5.......『告げ人』 へ 目次のページに戻る 制作・著作 夕華君 編集(多分)ハム 感想はこちらへ kame-mm@jttk.zaq.ne.jp デザインが痛いぞ ゴルァ!などという罵声はこちらへ y86y@aol.com |